都内での上映はこれが最後だった昨日、スコセッシ+ストーンズの「Shine A Light」を観てきた。
DVDを買うか買わぬかの判断材料にしたかったし、どうせ観るならまずは大画面+大音量の映画館で観ておきたかった。なんてったって、ライブ映画だからね。
場所はいつもの早稲田松竹。ラスト1本、800円。
これだけのために高田馬場まで行くのももったいなかったので、私が一番おいしいと思っているインドカレー屋のJYOTIが高田馬場にもあるらしいから、立ち寄ってみることにした。
が、地図を見て調べていったとおり、明治通りを歩いても店が見つからない。違う名前のカレー屋はいくつかあるが、JYOTIはない。しかし、恐ろしいほどにお腹が減っていたので、「ここでいいや!」とYUJIN(友人)という名のインドカレー屋に入ってみた。
オーダーしたのはAセット(950円)。サラダ、チキンカレー、野菜カレー、ナン、ご飯、ソフトドリンク(ラッシー)という内容。サラダドレッシングがごまドレだったのには若干驚いたが、どれもおいしくて、特にナンは私好みのモチモチとしっかりした生地だったから嬉しかったー。野菜カレーの方が辛かったんだが、なぜかハラペーニョの味がした。
それでもやっぱりカレーはJYOTIの方がおいしいなぁ。
悔しかったので帰宅後にネットでもう一度場所を確認してみたら、入ってみたYUJINは元JYOTIがあった場所だったことが判明。てことは、馬場から撤退してしまったのか…。食べたくなったら飯田橋まで行かねばならぬ、というわけね…。

さて、映画の話。
最終回ということもあって大勢の人が駆けつけていたため、珍しく整列入場になった。混みあってスクリーンが見づらくなると嫌だったので、人の頭が邪魔にならない2列目に座った。
とにかく言えることは、観てよかったということ。
やっぱりあの人たちは違うな。
私は特にストーンズ大好き人間というわけではないけれど、彼らはスターになるべくしてなった人たちなんだと、尊敬の目で見てしまった。
「石の上にも三年」なんて言葉が非常に耳に痛い、同じ仕事を6年以上続けたことのない私からすれば、40年以上も一つのことをし続けている彼らはそれだけで十分に尊敬に値するわけだが、このフィルムを撮影した時点でミックとキースは63歳。チャーリーは65くらい? なのに誰ひとりとしてハゲもせず、メタボにもならず、黒のスリムパンツをはきこなし、アクセサリーをじゃらじゃら付けても嫌味に見えないなんて、そこら辺のおっさんと違い過ぎるにも程がある。唯一年齢を感じさせるものといえば、シワ。あれはキャリアの年輪以外の何物でもない。あと付け加えるならば、円熟味を増した人間性か。
そう、とにかくこのフィルムではキースがめちゃくちゃイイ人に映っているのだ!
かつて悪行の数々をはたらき、数年おきにゴシップ記事をにぎわしてきた人とは思えない(木から落ちて骨折だか何だかをし、ツアー日程を延期させたことがあるような人とは思えない)ほど、イイ人になっている。
その人間性を垣間見せてくれるシーンがこのフィルムの中で何ヶ所かある。
特に印象に残っているものを挙げると、冒頭に近い部分でキースがスコセッシに「いいショットが撮れる場所を教えてあげようか」と言って、バスドラの前にしゃがみ込む。「ここは俺の特等席なんだ」なんてことを嬉しげに言ってる顔からは、この人にはストーンズが染みついてるんだなぁと思わされた。結局このポイントはステージど真ん中で邪魔だから、劇中では使われなかったけど。
あとは彼がソロをとる場面。ギターを下げずに歌うキースを私はあまり目にしたことがない。ここでスライドギターを弾くロニーもかっこよかった。んで、その曲の後、2曲目のソロの最中にはインタビューが挟まれる。ここで言っていた「俺もロニーも一人ずつだと下手くそだけど、二人合わさると最強なのさ」という一言。このときの表情が忘れられない。
この曲ではこの角度から誰をどういう風に映す、と細かくカット割を考えていたというスコセッシ監督、チャーリー・ワッツの出番があまりにも少なすぎやしませんかい!?(苦笑)
ライブ映像が始まって3曲か4曲経っても、ちっともチャーリーが映らない。見えたと思ってもミックにピントが合ってて後ろのチャーリーがボケてたり、スクリーンのチョー端っこに一瞬映るだけだったり…。曲が終わったところでようやくチャーリーのアップになったと思ったら、「Oh, 疲れちゃったぜー」とでも言いたげな表情。
豪華なストーンズのステージは、メンバーのほかにコーラスが3人、キーボードが1人、ホーンが4人と大所帯である。これだけ旋律を奏でる人たちが加わっていても、リズムを刻んでいるのはチャーリーとベースのダリル・ジョーンズの2人だけ。パーカッションは入っていない(たまにコーラスの人がマラカスやタンバリンを振る程度)。それなのに、ストーンズのグルーヴを生んでいるのはチャーリーなのに、映らない!
ああ、無情。実はストーンズをストーンズたらしめているのは、ひたすらに彼のリズムであるのにこの扱い。ひどいぜ、監督…。
ロン・ウッドは、なんだか髪型がかわいかった。よくお似合いだったわ。
ストーンズのメンバーはそれぞれにみんなお洒落さんだ。ミックはよくギラギラ、もしくはヒラヒラしたのを着てるけど別にそれほど変じゃないし(たまに??なときもあるけど)、チャーリーはあの歳で無地のTシャツを着こなすし、キースはゴチャゴチャしてるけどそれが彼だし(あのバンダナみたいなやつも、彼にしか許されないよな)、ロニーはシンプルな服にアクセサリー多めでバランスがいい。何てったって、あのタイトな黒ジーンズが似合うんだから、すごいよ。
そしてミックはねぇ、やっぱり怪人だね。あんな肺活量、どうやって付けるんだ? どんなトレーニングをしているのか、興味ある。
映画を撮るにあたって、スタジアムではなく3000人規模のホールを選んだスコセッシの意図が、この映画を観ていると分かる。確かに、至近距離で迫力あるストーンズの姿を伝えたいというのもあるだろうが、あれくらいの規模だとバックやサイドにスクリーンをセットする必要がないから、観客はステージ上のバンド自体に集中できるのだ。加工されたスクリーンの映像に気を取られることなく、メンバーの方をしっかりと見てコミュニケートすることができる。それに、スタジアムの大きなステージだとメンバー全員に目を向けることは不可能だが、小さなステージならば同時に数人の動きを視界に入れることができる。そして、そんな熱い視線を感じ取ったメンバーは更に演奏や動きに力が入る。
とにかくミックの動きは半端なかったよ。数年前にドームで観たときなんかよりも、数倍動き、踊っていた。さすがはエンターテイナー、さすがはサー・マイケル・フィリップ・ジャガー。
それとも単に、最前列に若くてきれいなおねーちゃんがずらっと揃っていたから気合が入っただけだったのかも!?(笑) ほんとに不自然なほど、最前は若いねーちゃんだらけだった。それにひきかえ3階席は…、むさい野郎どもがひしめきあっていた(苦笑)。ま、あれが虚飾のない現実だと思う。
それでもって、キースが歌詞を間違えたときのミックの目は怖かった…! 彼のステージに対する姿勢が感じられる一瞬だった。
2時間以上のフィルムの中での見どころは、バディ・ガイとの共演だ。これには痺れる。かっこいいぞ。
バディは声量が違うなぁ〜。パーンと張りのある、はち切れそうな、それでいて深みのある声。
キースがくわえていたタバコを吐き飛ばすところも、彼らしくて良かった(私は基本的にアンチ・タバコ人間だが)。
曲が終わったときに、キースがバディにギターを贈っていた。でも、どことなくバディの表情が「オレ、これもらうの?」みたいな、おどおどした感じだったのが妙にウケた。
とにかく、この一曲は見ものである。
ジャック・ホワイトとの共演も悪くなかった。意外とミックと声質が合うようで、いいハーモニーをしていた。ただ、もう少し痩せてから来ればよかったのに。ストーンズのメンバーがみんな細いから、ジャックのがっちり感が目立っていた。
クリスティーナ・アギレラもステージに出てきたけど、んー、特にコメントは無い(苦笑)。あれだけ歌っても、顔に一滴の汗もかかないのはさすがだな、と思ったくらいか。
さて、そろそろ締めに入ろう。
最初に書いた「スターになるべくしてなった人たち」というところに通ずるが、やっぱり彼らにはスターに、金持ちになる資格がある。
劇中に彼の若かりし頃のインタビューが挟まれているが、今までどれだけ同じ質問や愚問を投げられてきたことか。どんなにくだらないと思える質問でも、それなりに答えないと「あいつは我まま、生意気だ」とか「礼儀を知らない」とか言われてしまう。そんな状況に耐え抜きつつ、これだけ多くの人たちをこれだけ長い間楽しませ続けてきているんだから、頭が下がる。
特に笑ってしまったのは日本でのインタビュー映像で、なんとも日本らしい年齢を訊くものだった。
女:「ところで、あなたはいくつ?」
ミック:「29になったところだよ」
女:「わー、私も同じぃ〜!」
思わずあたしゃ、「くっだらねぇ〜」と声にだして言ってしまったよ。それでも29のミックは笑顔で流していた。大人だわ〜。伊達に、キラキラ王子様じゃないよ。
むやみに買い物をできない私であるが(ええ、未だにプーです)、やはりこのDVDは買ってしまいそうである。またしても、彼らをより一層億万長者にさせる手助けをしてしまうようだ。
とはいえ、これは映画だから、DVDが売れて喜ぶのは映画会社か。
映画になると、普通のライブビデオとは違い、アートになる。映像にストーリーが生まれる。
大抵のライブビデオだと、ギターを弾く手元やタムを叩く手元が頻繁にアップで映ったり、“これだけ集めたんだぞ”とでも言いたげに何万人というオーディエンスを映したりするが、この「Shine A Light」ではほとんどが顔のアップだ。アイドルのビデオ並である。
しかし、その捉え方がまた違っている。どの1シーンも、写真みたいなのだ。一時停止ボタンを押すと、写真のようにバランスがいい。あるいは劇的な一瞬だったりする。こんなことを北野武監督も言っていた覚えがあるが、この映画はまさにそうだと思う。
きらきらと輝く若い時に撮っておくのももちろんいいが、こうして酸いも甘いも噛み分け、円熟味を増した頃に記録を残すのもいい。というか、残せる人がうらやましい。
自分もいつかそんなばーさんになりたいものである。